治療について
膝関節疾患

増田整形外科では膝関節に対して様々な治療の選択肢を設けて、患者様のニーズにお応えできるような治療を行っております。
従来のリハビリテーションやヒアルロン酸の関節注射、薬物療法はもちろん、ハイドロリリース注射や先進医療といわれるPRP療法・APS療法も導入して行っております。
膝関節手術も積極的に行っており、患者さんそれぞれの年齢や職業、治療目標にあわせて治療計画を立てることが可能な体制を整えております。
靱帯を温存する人工関節
当院では、部分置換術や前十字靭帯温存型の人工関節など、専門性の高い手術を導入しています。数種類の機種の中から、患者様の膝の状態に合わせた手術を行っています。
手術後は、エコーを用いた神経ブロック注射を行うことで、術後の痛みを抑えてのリハビリが可能なため、入院期間も10日から2週間程度になっています。
適切な時期に適切な術式を選択し、手術前後のリハビリを積極的に行うことで、人工関節置換術後も、正座やしゃがむ動作が可能な患者様も増えてきています。
人工膝関節手術支援ロボット『CORI』を導入

当院では、安定した成績を実現するため、術者が担当する関節を明確に分けて人工関節手術を行なっており、部分置換術や前十字靭帯温存型の人工関節など、より専門性の高い手術が可能です。靭帯を温存する手術を行うためには、より正確な手術手技が必要とされます。
このたび、人工膝関節置換術に使用する最新型医療用ハンディ・ロボティクス「CORI(Core of Real Intelligence)サージカルシステム」(Smith&Nephew社製)を、令和3年(2021年)12月23日に九州で初めて(全国で7番目)に導入しました。
今回「CORI」を導入する事で、更に膝手術の精密性・正確性を担保する事が出来ます。
「CORI」を使用するメリット
手術支援ロボット「CORI」を使用するメリットとしては以下の内容が挙げられます。
- 赤外線カメラにより関節の表面形状を読み取り、人工関節インプラントの設置位置や角度、サイズを手術中にリアルタイムで確認できます
- 患者様の元来の膝の形状を再現させるため、これまで術者の手の感覚に頼っていた手技が、1mm、 1°と言った精密さでの微調整が可能です
- 膝関節の屈伸時の動きもコンピューターが認識することで、靭帯にかかるストレスを計測出来るため、術中の調整が簡単に出来る様になります
今後の展開 期待されること
当院で取り組んでいる靭帯を温存する人工関節は、特に靭帯のバランスを調整する事が難しい手術ですが、「CORI」を導入する事で、靭帯にかかるストレスを数値化して、安定した関節をより正確に形成できる様になります。その為、患者様の生来の膝関節に合わせて人工膝関節置換術を行う事で、痛める前の膝関節の機能を再現する事が可能になります。
地元にいながらでも、最先端の医療技術を受けられる機会をつくり、地域医療に貢献していきたいと考えています。
CORIのメディア掲載
人工関節手術支援ロボット九州で初導入 テレビ佐世保 放送日令和4年1月23日
膝関節手術 実績
手術名 | 手術数 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
2021年度 | 2020年度 | 2019年度 | 2018年度 | 2017年度 | 2016年度 | 2015年度 | |
TKA(人工膝関節全置換術) | 59例 | 48例 | 39例 | 34例 | 54例 | 45例 | 36例 |
UKA(人工膝関節単顆置換術) | 46例 | 64例 | 43例 | 42例 | 19例 | 13例 | 9例 |
人工膝関節再置換術 | 2例 | 5例 | 4例 | 4例 | 3例 | 4例 | 3例 |
脛骨高位骨切り術 | 14例 | 12例 | 12例 | 17例 | 7例 | 14例 | 9例 |
前十字靭帯再建術 | 0例 | 2例 | 7例 | 7例 | 9例 | 9例 | 2例 |
関節制動術 | 2例 | 0例 | 0例 | 2例 | 2例 | 1例 | 2例 |
その他関節鏡手術 | 62例 | 79例 | 42例 | 41例 | 53例 | 60例 | 45例 |
計 | 185例 | 210例 | 147例 | 147例 | 147例 | 146例 | 106例 |
股関節疾患

増田整形外科では股関節の治療にも積極的に取り組んでいます。長崎労災病院や諫早総合病院で多くの股関節手術を行ってきた土井口医師が担当します。
股関節の痛みの原因には、小児期ではペルテス病、大腿骨頭すべり症などがあり、成人では変形性股関節症、大腿骨頭壊死症、関節リウマチなど様々な病気があります。診断は診察のほかにX線、超音波、MRIなどを用いて行います。治療に関しては、投薬、注射、リハビリなどの保存療法から手術療法まで、患者さんの病状に応じた治療を行っています。注射に関しては、超音波を使用したハイドロリリースや関節内注射を行い、より早い除痛を心がけています。また、股関節周囲の筋・腱付着部痛に対しては当院で導入しているショックマスターが有効な場合が多く、リハビリで行うことができます。
股関節疾患は腰椎や膝の疾患に似た症状を呈することもあります。特に腰椎疾患として加療され症状が改善しない患者さんの中には、主原因が股関節であることもあるので注意が必要です。これはHip-Spine syndromeと呼ばれる概念の中のmisdiagnosed typeと言われるもので、その可能性も考慮に入れた診察や、腰椎のレントゲン撮影を行う際に股関節まで含めて撮影することでより正確な診断が可能になります。Hip-Spine syndromeに関してはこれまでに多くの学会活動や執筆・講演を行っています。
股関節の外傷
学童期では主にスポーツ外傷が多く、骨盤周囲の筋・腱付着部の損傷や、剥離骨折などがあります。また高齢者では骨粗鬆症を基盤とした大腿骨近位部の骨折や、骨盤(恥骨、坐骨など)の骨折などがあります。レントゲンで診断困難な場合もありますが、MRIを行うことで早期の診断が可能となります。高齢者の場合は、骨折後長期の臥床・安静により、歩行能力が低下することが多いため、できるだけ早期に手術を行い、リハビリを行うことで受傷前の活動性を維持することができます。


変形性股関節症について
股関節疾患の代表的な疾患である変形性股関節症について説明します。変形性股関節症になる原因は、日本では寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)といって、臼蓋(きゅうがい)による大腿骨頭の被覆が少ないことが原因の場合が多く、女性に多いのも特徴です。その病期は前期、初期、進行期、末期の四段階に分類されています。前期はまだ関節裂隙(れつげき)の狭小などの変化がない状態で、初期は関節裂隙の部分的な狭小や骨硬化・軽度の骨棘形成がある状態、進行期は関節裂隙の部分的消失や骨嚢胞・骨棘形成がある状態、末期は関節裂隙の広範囲な消失や巨大な骨嚢胞・著しい骨棘(こつきょく)形成がある状態です。

一般的には進行期以降の患者さんでは人工股関節全置換術(THA)の適応になりますが、高齢の方であれば初期であっても痛みが強ければTHAの適応にもなりますし、進行期以降でも若い方であればできるだけ、投薬やリハビリなどにより保存療法を行ってもらいます。投薬については現在、変形性関節症や慢性疼痛に適応となった様々な種類の薬がありますので、副作用に注意しながら、患者さんの状態に応じた処方を心がけています。リハビリは股関節のストレッチや筋力増強訓練が中心となりますが、病期が進行した患者さんにはジグリングといわれる、いわゆる「貧乏ゆすり」運動が有効といわれています。当院ではジグリングを覚えていただくため、「健康ゆすり」という補助器具を用いてジグリングの感覚を覚えていただき、自宅でも継続して行うように指導しています。
CPO(Curved Periacetabular Osteotomy)について
寛骨臼形成不全が原因である変形性股関節症の場合、病期が前期や、初期で症状が軽ければ投薬やリハビリなどの保存療法が中心となりますが、痛みが強く保存療法に抵抗性の場合は、関節を温存する手術である寛骨臼移動術を行います。簡単に説明すると、骨盤の臼蓋周囲をドーム状に切り、寛骨臼を前外方に回転させて固定し、臼蓋による骨頭の被覆を良くする手術です。ただし年齢に制限があり、50歳までの患者さんが適応となります。当院では股関節の前方から小さな皮切で行う、CPO(curved periacetabular osteotomy)という術式を行っています。この手術はで股関節外側の筋を切らないので、筋力の回復が早いというメリットがあります。この術式は九州でも限られた病院でしか受けることができません。症例数はこれまで80例程度ですが、良好な成績が得られています。

人工股関節全置換術(THA:Total Hip Arthroplasty)について
THAとは障害された股関節を人工物に置き換える手術です。人工股関節は寛骨臼側と大腿骨側それぞれ複数の部品から成り立っています。寛骨臼側は金属のカップとポリエチレンの組み合わせで、大腿骨側は大腿骨内に挿入する金属のステムとセラミックの骨頭の組み合わせになります。カップやステムに使用されている金属は骨親和性のよいチタン合金です。関節摺動面はポリエチレンとセラミック骨頭の組み合わせを多く使用しています。セラミック骨頭は金属骨頭より低摩耗で、金属アレルギーが少ないといわれています。人工股関節の材質の進歩により、人工股関節の耐用年数は20年以上見込まれるようになってきています。
THAの適応は病期が進行した変形性股関節症や大腿骨頭壊死症などで、保存的加療に抵抗性で、痛みが強く、日常生活に支障をきたすようになった患者さんです。股関節が原因で腰痛や膝痛が強くなってきた場合もTHAの適応となる場合があります。THAの適応年齢は50歳以降が理想的ですが、痛みや可動域制限が強く、日常生活や仕事が困難な方であれば、50歳未満でも適応となります。
手術に関しては、手術時間は1時間程度で、輸血を要することはほとんどありません。合併症である術後脱臼や感染などに関しては様々な工夫で1%未満となっているため、安心して手術を受けていただけます。使用する人工股関節に関しては患者さんの股関節の状態や形態に応じた機種を選択しています。術後疼痛に関しては股関節周囲多剤カクテル療法や鎮痛薬を工夫して、より痛みが少なくなるように配慮しています。術翌日より歩行開始し、数日で杖歩行が可能となり、術後1週で階段昇降や屋外での歩行訓練を開始し、日常生活動作やバスの乗り降りの訓練まで行い、術後2週で退院となります。社会復帰は職種によっても異なりますが、4週~6週での復帰を目安にリハビリを行ってもらいます。術後長期経過すると人工股関節のゆるみなどの不具合により再置換が必要となる場合があり、1年に1回程度の定期診察をお願いしています。
THAに関してはこれまで1000例以上の執刀経験があり、また難治例といわれる高位脱臼、強直股、再置換例も十分対応可能です。


股関節手術 実績
手術名 | 手術数 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
2021年度 | 2020年度 | 2019年度 | 2018年度 | 2017年度 | 2016年度 | 2015年度 | |
THA(人工股関節置換術) | 57例 | 39例 | 57例 | 33例 | 13例 | 15例 | 16例 |
THAリビジョン | 1例 | 4例 | 2例 | 2例 | 3例 | 1例 | 2例 |
CPO(寛骨臼回転骨切り術) | 1例 | 2例 | 2例 | 1例 | 0例 | 0例 | 0例 |
KSネイル | 12例 | 3例 | 7例 | 3例 | 8例 | 5例 | 4例 |
計 | 71例 | 48例 | 68例 | 39例 | 24例 | 21例 | 22例 |
運動器・エコー/ハイドロリリース注射
整形外科領域でも診断や治療に超音波検査(エコー)が導入されるようになってきました。
エコーを用いることで検査だけではなく、筋肉の動きや腫れ、神経血管の位置を把握しながら同時に注射などの治療を安全に行える利点があります。
増田整形外科では聴診器を使うように気軽にエコーを使用した治療が提供できるように診察室や処置室の改装を行い、常勤医2名に対して2台のエコーの機械を用意しております。
必要な患者様には簡便にエコーを使用できるように体制を整えています。
エコーを用いたハイドロリリース注射や関節注射、神経ブロックなどが受けられるように成っています。
一度の注射で痛みが完全に取れることは難しいですので、当院では理学療法士がマンツーマンで行う運動器リハビリテーションを合わせて受けていただいています。
筋肉をほぐしたり、可動域を広げたり、筋力を強化していくことを目的としたプログラムを無理のないように実施していきます。
また痛みを予防するために、正しい姿勢や体の動かし方、患者さんが安全に自分でできる体操やストレッチ、筋トレのやり方なども指導していきます。
リハビリテーションは主治医からの指示に基づいて理学療法士が施術しております。
またリハビリを行う中で理学療法士が気付いた問題点を担当医にフィードバックして、連携しながら進めています。
慢性的な肩凝りや腰痛などの症状、寝違え、ぎっくり腰、五十肩、腱鞘炎など様々な痛みやしびれにハイドロリース注射での対応が可能です。
また、ハイドロリリース注射は生理食塩水を使って行うことが出来ますので副作用の心配が少なく、妊婦や授乳婦の方にも安心して受けていただけます。
痛みを抱えて困っていらっしゃる方は是非当院にご相談ください。
再生医療(APS療法)多血小板血漿(PRP)抽出液による関節症治療について
多血小板血漿(PRP)とは?
血液の中には、傷を治す働きを持つ「血小板」という成分があります。この血小板を 高濃度に凝縮し活性化させたものが、PRP:Platelet-Rich Plasma(多血小板血漿)です。
PRPにはたくさんの成長因子が含まれていて、細胞の成長を促進する力がありますが、このPRPに特別なキットを使うと、炎症や軟骨分解を抑制するPRP抽出液、つまり自己タンパク質成分である、APS:Autologous Protein Solutionが抽出できます。APSはPRPよりも強力に炎症を抑える力、人の本来持っている治癒能力や組織修復能力・再生能力を最大限に引き出すことが示唆されています。この療法は現在海外の臨床試験で有効性が検討されている最中ですが、傷んだ関節軟骨や組織などの炎症や痛みを抑え、関節軟骨の破壊を緩やかにし、関節内の環境をより正常な状態になるようにうながすと考えられています。
PRP治療について
患者様ご自身の血液から作製したPRPを患部に注射する治療です。
PRP作製は医療機器として治療に使用すること(安全性)が厚生労働省より認められた医療機器を使用します。患者様ご自身の血液を用いるため、免疫反応の起きる可能性は極めて低いと考えられます。
また、採血と注射のみで終わるため、患者様の体への負担も少なくて済みます。
治療効果や効果の持続期間には個人差があります。
治療の流れ
APS PRPでの治療をご希望の方で、当院を受診されたことのない方は一度電話にてご連絡いただけるとその後の治療がスムーズに行えます。
一度 通常の検査や担当医の診察を受けて頂き、通常行われる治療法や費用について説明を行わせて頂きます。
他施設ですでに治療を受けられている方は、レントゲン検査MRI検査のコピーを持参していただければ当院での検査は不要です。(追加の検査をお勧めする場合はあります)治療は日帰りで終わります。原則として麻酔は必要ありません。
治療後は定期的に副作用の有無の確認、治療効果の評価を行うようになっています。
詳しくは診察時に担当医にお尋ねください。
1患者様の血液を約26ml~52ml採ります
2血液を遠心分離機にかけ、PRPを作製します
3PRPを患部に注射します
※治療当日は飲酒や入浴をお控えください。
再生医療 実績
治療法 | 投与数(症例人数) |
---|---|
2020年度 | |
APS | 11(9名) |
PRP | 3(3名) |
PRP-FD | 6(5名) |
骨粗鬆症外来

増田整形外科では骨塩量測定装置(DXA法)を導入し診断を行い、骨代謝マーカーを参考に患者様に合わせて治療を行います。
骨粗鬆症マネージャーを各部署に配置しており、お薬だけでなく食事や転倒防止など総合的に骨折の予防に努めています。
リウマチ外来

関節リウマチは免疫の異常により関節に腫れや痛みを生じる疾患です。
節変形を起こさないためには早期診断・早期治療が必要となります。
抗リウマチ薬や生物学的製剤の処方など専門的治療を行っております。
リウマチ外科として手術治療からリハビリ・装具療法まで総合的な加療を提供いたします。
毎月第3木曜日は佐世保中央病院リウマチ・膠原病センター 植木医師の膠原病専門外来を行っております。
外傷・骨折~早期の社会復帰を目指した治療~

増田整形外科では骨折などの外傷に対して出来るだけ早期の復帰を目指した治療を行っております。
寝たきりの原因となりやすい大腿骨近位部骨折に関しては緊急手術として対応しており、可能な限り早期に手術加療を行って歩行訓練を開始し、早期に受傷前の歩行能力を獲得できるように治療を計画しています。
他部位治療に関しても准緊急の対応で早期の職場復帰を実現するなど患者様のニーズに合わせて治療目標を設定した加療を心がけています。
リハビリテーション

増田整形外科には10名の理学療法士が勤務しており様々な運動器疾患対応し、患者様の機能維持・改善を目指します。
術後のリハビリも充実しており、日常生活動作はもちろんスポーツ活動や仕事へ復帰するまで担当の理学療法士がサポートいたします。
手術を担当する医師も常勤しておりますので、術中の所見も考慮したリハビリメニューや目標設定のもと治療に当たります。
物理療法も各種器具を配置しており、患者様の疼痛緩和に努めます。